M&Aレポート

持分法とは?:適用会社と連結子会社の差異、判定条件、会計処理、メリット・注意点を解説

企業の成長と変化に伴い、M&Aが活発化していますが、その際に避けて通れないのが「持分法適用会社」の理解です。経営戦略の要となるこの会計手法は、会社の業績や財務状況を正しく把握するために不可欠です。適用会社と連結子会社の違いや判定基準は、経営者や投資家にとって重要な指標となります。この記事では、持分法の基礎から実務上のメリット、また日本と国際基準の差異についてわかりやすく解説します。株式市場で情報を得たいあなたのためのガイドブックとしてご利用ください。

持分法とは?—基本から理解する会計手法

会計における持分法とは、企業が他企業に対して一定の投資をしており、その企業の経営に重要な影響を及ぼす場合に、投資先企業の財務成績を投資企業の財務諸表に反映させるために用いる会計手法です。具体的には、親会社が子会社ではないが、重要な影響力を持つ会社(関連会社など)の議決権の20%以上50%未満の株式を保有している場合に、その会社を「持分法適用会社」と呼び、持分法による会計処理を行います。

持分法適用の概念とその役割

持分法は、企業グループの健全な財務状況をより正確に表現するために不可欠な役割を果たします。特に、企業が持つ関わりが経営に有意な影響を与える他企業において、持分法は議決権割合に応じた企業の業績を投資企業の財務諸表に反映させることで、対象企業の経済的実態を偽らず示すことを可能にします。このように、持分法適用会社に対する投資の損益は、直接投資企業の結果に影響を及ぼすため、ストレートに財務諸表に盛り込む重要性があります。

持分法の基本的な会計処理と流れ

持分法は比較的複雑な会計処理ですが、基本的な流れを把握することで理解が深まります。まず、投資企業が持分法適用会社の株式を取得する際に、「投資有価証券」勘定に購入代金を記録します。その後、定期的に投資先企業の業績に応じた利益分又は損失分を反映させるため、「持分法による投資損益」勘定を通して投資企業の利益又は損失に振り替えます。これにより、投資先企業の経済的成果が投資企業の財務成績に適切に反映されることになります。

また、持分法を適用するには、親会社が持分法適用会社に対して有意な影響を与えていることを証明する必要があるため、親会社はその影響力の証拠となるさまざまな資料を用意し、必要な注記を財務諸表に明記することが義務付けられています。同じ企業グループ内であっても、持分法の適用を受けるかどうかはその企業間の関係性の深さや、保有する議決権の数によって異なり、連結財務諸表における適切な会計処理が求められます。

最終的には、持分法適用によって生じる調整額は、連結財務諸表上で必要な修正を行い、投資先企業の実際の貢献度が投資企業の経済状況に正しく反映されるようになります。これにより、ステークホルダーは、企業グループ全体の資産、負債、収益、費用の真の姿を把握することができるのです。

持分法適用会社と連結子会社の違い

持分法適用会社の定義と特徴

持分法適用会社とは、株式を一定の割合以上保有しているが、連結子会社には該当しない企業を指します。具体的には、議決権株式の保有比率が20%以上50%以下の会社で、親会社による経営上の重要な影響を受ける状況にあります。これにより、所属する企業グループの運営や財務成績にも影響を及ぼすため、連結財務諸表にて持分法に基づく会計処理が行われるのです。

連結子会社との差異とその判断基準

連結子会社は、親会社が議決権の50%以上を保有し、支配力があり、その経営を決定する権限を持つ会社です。このため、子会社の財務状況は親会社の財務状況と完全に合算された連結財務諸表に反映されます。対照的に、持分法適用会社は親会社の影響下にあるが、連結子会社ほどの支配力はなく、親会社はその業績を割合に応じて反映させることとなります。

会計実務における処理方法の相違点

会計処理において、持分法適用会社と連結子会社では大きな差があります。持分法適用会社は、親会社の財務諸表に「投資有価証券」として該当会社の純資産の変動分だけを反映させます。一方、連結子会社の全ての資産、負債、収益、費用は親会社と組み合わせて全体の財務諸表に組み入れられます。結果として、持分法適用会社の影響は連結子会社よりも小さくなり、会計上の処理も単純化される傾向が見られます。

持分法適用会社の判定条件

持分法適用会社とは、親企業が一定の投資を行い、かつ経営にも重要な影響を及ぼし得るが子会社には該当しない企業です。企業が連結財務諸表を作成する際に、持分法の適用が必要となる主要なケースについて掘り下げて明確にします。

持分法が適用される企業の範囲

持分法が適用され得る企業には、主に関連会社や非連結子会社が含まれます。関連会社とは、親企業が20%以上の議決権を持ち、経営方針の決定に重要な影響力を有する企業のことです。一方で、非連結子会社は親企業による支配が一時的または非重要であるため、連結決算の対象からは除外される子会社を指します。しかし、そのような非連結子会社でも、持分法の適用を要する場合があります。

判定における具体的基準と考慮要素

持分法適用会社を判定する際には、いくつかの基準と考慮すべき要素が挙げられます。まず、持分法適用会社は、通常でも親企業が20%以上50%以下の議決権株式を保有していなければなりません。保有割合が20%未満の場合でも、特定の者と合わせて20%以上の議決権を有するときに、一定の条件の下で持分法が適用される場合があります。

さらに、持分法の適用を判断する上で、以下のような要素が考慮されます。

  • 親企業による重要な融資の有無
  • 親企業から提供される重要な技術
  • 親企業との間の商取引の規模と重要性
  • 親企業による役員派遣の実態
  • 財務および経営方針決定における親企業の影響力

これらの要素を考慮して、親企業が関連会社や非連結子会社に対して実質的な影響を及ぼしているかどうかを判断し、持分法の適用を決定します。

連結財務諸表における持分法の実際

持分法は、連結子会社ではないが、親会社が経営に重要な影響を及ぼすことができる会社(持分法適用会社)の財務情報を、親会社の連結財務諸表に反映させる会計処理手法です。この方法を用いることによって、ステークホルダーは企業グループ全体の財務状態が合理的に伝えられることを期待できます。

持分法適用会社の財務情報統合手順

持分法による財務情報の統合は、主に以下の手順で行われます:

  1. 持分法適用会社の議決権の持株比率に基づいて、純資産価値を算定します。
  2. 損益についても、持株比率を用いて算出し、投資利益または投資損失として親会社の損益計算書に反映させます。
  3. 投資有価証券勘定に持分法適用会社への投資金額を記録し、その金額を基に持分法による調整を行います。

この処理により、連結財務諸表において親会社及びそのグループ企業が全体としてどのような業績を上げているのか、また財務状態がどういった状況にあるのかが表示されます。

連結財務諸表作成時における注意点と詳細な説明

連結財務諸表を作成する際に、持分法を適用するにあたって留意すべき点がいくつかあります。以下がその概要です:

  1. 会社法や連結財務諸表規則に従って、正確な持分法適用会社の情報と記載ルールを遵守すること。
  2. 財務情報が持分法適用に影響される関連会社を定期的に評価し、状況が変われば適切に注記を更新すること。
  3. 会社の持つ関係会社の状況を明確に示し、持分法の適用有無及びその理由について説明すること。

持分法を適用する場合、連結子会社に対する処理とは異なっていますので、その会社ごとの特定の状況に応じて正確な情報を反映させる必要があるのです。そのためにも、持分法適用会社の変化を密にモニタリングし、関連する情報を誠実かつ迅速に処理することが重要といえます。

総じて、持分法は企業価値を正しく評価し理解するために不可欠な会計処理であり、これに適切に対応することは企業の透明性と信頼性を高めます。適用する際には、上記の注意点を留意しつつ、関連会社の影響力を正確に連結財務諸表に反映させることが重要です。

持分法適用のメリットと日本基準 vs IFRSでの相違

持分法を用いることの利点と効果

持分法を用いることには、いくつかの利点があります。最も顕著なメリットは、会計処理の合理化です。特に連結子会社ではない企業について、親会社が影響力を有しながらも連結決算の対象には含められない場合、その企業の損益を比例配分に基づいて親会社の財務諸表に反映させることができます。これにより、ステークホルダーにとっては企業グループ全体の経済的実態をより正確に把握するための重要な情報が提供されます。

また、持分法を適用することにより、持分法適用会社の経営に対する投資効果を直接連結財務諸表に反映することができるため、グループ全体のパフォーマンス管理が向上します。この方法により、連結決算がより複雑化し運用コストが上昇することを避けることができるため、適用されるべき会社とその範囲を適切に判断することが企業にとっての重要な会計戦略となりえます。

日本の会計基準と国際会計基準(IFRS)の違い

日本の会計基準における持分法の適用は、議決権を持つ株式の所有比率や経営に及ぼす影響などの具体的な基準に基づいて判断されます。一方、国際財務報告基準(IFRS)では、保有している股式の割合だけでなく、実質的な支配力や影響力が重視され、「ジョイントベンチャー」や「ありうるインフルエンス」といった基準を用いて、持分法適用の判断が行われます。

この相違は、国際的に事業展開している企業が連結財務諸表を作成する際に影響を及ぼします。日本基準においては持分法適用の閾値が明確であるのに対し、IFRSではより実質的な関係性が強調されるため、異なる基準に基づいて会計処理を行う必要があります。したがって、IFRSを採用する多国籍企業では、持分法該当企業かどうかの判断がより複雑な議論を要することが予想されます。

要するに、グローバルな視点で見た場合、持分法適用はさまざまな会計基準間で差異があるため、国際的な会計の統一性や透明性を高める上で、標準化された判断基準を理解し適用することが企業にとって重要です。

持分法適用会社判定の実務ポイント

連結財務諸表を作成するにあたり、持分法適用会社の判定は非常に重要です。持分法とは、親会社が支配していないが、重要な影響を及ぼせる投資先企業(通常は関連会社)に対し、保有議決権株式の割合に基づく会計処理をする方法です。しかし、単に保有株比率だけで判断するのではなく、経営に対する実質的な影響力も考慮する必要があります。そうした判定において実務で活かせるポイントを整理してみましょう。

会計処理における判定のヒント

まず、持分法適用が考慮されるのは、保有議決権の比率が一定の範囲(通常は20%以上50%以下)にある企業です。しかし、単なる数値上の基準だけでは十分ではなく、保有企業が経営方針に重要な影響を及ぼせるかどうかがカギとなります。関連会社の財務状況や業績が主体企業に大きな影響を与えるかも検討し、条件を満たした場合には持分法が適用されます。

実務上の注意点と事例検討

実務においては、「経営の実質的な影響」を判断する際に以下の点を検討することが助言されています。たとえば、予算策定、戦略的決定に関連会社が参画しているか、主要な取引先であるかなど、関連会社との相互依存度を見ることです。また、関連会社に対する融資の有無や、経営者の兼任の状況なども考慮されるべきポイントです。

それでも明確な線を画するのが困難な場合は、会計アドバイザーや監査法人との連携を密にし、合理的判断を下すことが推奨されます。具体的事例を照らし合わせながら、会計基準に則った適切な取り扱いが求められるのです。

持分法の適用判断は、ケースバイケースで異なるため、各企業の具体的事情を踏まえた判断が求められるでしょう。この判定作業が正確に行われないと、事業の外部報告に誤解を生じさせることに繋がるため、各社の連結経理や監査部門、経営員にとって重要なプロセスです。

また、会計監査の観点から見ても、持分法適用会社の判定は連結財務諸表におけるキーになるため、正確かつ慎重な取り扱いが求められます。企業経営において、適正な連結財務諸表の作成は、内部管理の健全性を示す指標の一つです。このため、会計基準に準拠した明確な判定基準を設け、適用状況を確実に把握することが不可欠です。

以上により、持分法適用会社の判定は非常に専門性の高い課題であり、連結財務諸表作成の基盤をなす重要な作業であることが分かります。適用する企業は判定条件を念入りに検討することで、会計処理の透明性と正確性を高め、全体としての企業グループの健全な経営を支えることに繋がるでしょう。

持分法適用会社に関連する最新動向

企業の持分法適用会社に関する手法の変化

企業経営において持分法適用会社の取り扱いは極めて重要な位置を占めており、適用判定基準や会計処理は常に見直される傾向にあります。最近では、企業のグローバル展開が進むにつれ、国際財務報告基準(IFRS)への対応が求められ、それに伴い持分法の適用基準が変化しています。国内基準とIFRSの違いを理解し、国際的な規準に則った持分法適用の手法が模索されています。

市場でのトレンドと対策

市場でのトレンドとしては、会社の透明性を高める目的で、持分法適用会社に関する開示要件が強化されている点が挙げられます。投資家からの信頼獲得とリスク管理のため、連結財務諸表における持分法適用会社の損益への影響をより明確にする傾向にあります。各企業はこのトレンドに対応するために、持分法適用会社の報告体制を再構築し、関連情報の適時かつ適切な開示に努めています。

まとめ

本稿では、持分法の基本的な仕組みから実務上の論点まで、幅広く解説してきました。持分法は、企業グループの経済的実態を適切に財務諸表に反映するための重要な会計手法です。連結子会社との違いを理解し、適用対象会社の判定を適切に行うことが求められます。

また、連結財務諸表の作成においては、持分法適用会社の財務情報の的確な統合と、各種の調整事項への対応が不可欠です。加えて、日本基準とIFRSの相違点を踏まえたグローバルな会計実務の展開も重要な課題といえます。

持分法適用会社をめぐる会計実務は、各社の事業戦略や経営環境によって大きく異なります。本稿で解説した諸点を踏まえつつ、自社の状況に即した適切な対応を行うことが肝要です。持分法への理解を深め、適切な会計処理と開示を行うことで、ステークホルダーに対する説明責任を果たし、企業価値の向上につなげていくことが期待されます。

M&Aについて相談するならand A company

私たちand A companyは、着手金・中間報酬が必要ない、完全成果報酬型のM&A仲介会社です。 じげんグループではこれまで20社以上のM&Aを経験。これらのM&Aを経験したアドバイザーだからこそ事業を深く理解し、様々な視点から会社の成長を検討いたします。 シナジーを考えM&Aをしてきたアドバイザーだからこそできる、ベストなマッチングをご提案します。

03-6432-0391 お問い合わせはこちら
グループ会社のサービス一覧